日本語史の理論的・実証的基盤の再構築
本研究は、日本語の歴史的研究を発展させていく上で、伝統的な研究によって蓄積された知見と、新たな言語理論によってもたらされる視点を統合・整理し、いかなる研究形態がもっとも有用であるかという点についての指針を提示することを目的とする。
日本語史は、国語学に特有の研究領域と考えられ、議論も国語学内部に閉じこもる傾向にあった。しかも、国語・国文系の学生は年々減少する傾向にあり、その中でも資料に基づく地道な実証的研究は学生に敬遠されがちである。まさしく伝統的な日本語史研究は危機的状況にあると言える。一方、近年欧米系の歴史言語学、近年の機能言語学や生成文法の研究者の中に、日本語史に興味を持つ向きもあり、特にこの10年で急速にその層が厚くなってきている。しかし、お互いの交流が乏しいため、データは詳しいが理論的枠組みが貧しいために意義が十分伝わらない研究、データの扱いに不慣れで知識が浅いにも関わらず、理論への貢献を急ぎすぎて、危うい議論を重ねる研究などがあとを絶たないのが現状である。本研究は、これら、日本語史に興味を持つあらゆる研究者のネットワークを形成し、相互の交流と情報の共有を進めるとともに、後進の研究者にとって魅力ある日本語史の枠組みを構築することを目指す。
金水 敏(研究代表者)
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