漢字研究一筋、独自の文明論─白川静氏が死去
漢字研究の第一人者で文化勲章受章者の白川静(しらかわ・しずか)氏が10月30日、多臓器不全で死去した。96歳だった。告別式は1日、近親者で済ませた。後日「お別れの会」が開かれる。
福井市出身。洋服商の二男に生まれ、小学校卒業後、大阪の法律事務所で住み込みで働きながら夜学に通い、19歳で中学を卒業、立命館大専門部(夜間)文学科で勉学を続けた。その後中学教員をしながら同大法文学部に入学。同大教授となったのは1954年。
一貫して漢字研究に打ち込み、中国最古の文字である甲骨文字をはじめ漢字文化圏の古典を丹念に読み解いて独自の文明論を展開、通説への批判精神に満ちた「白川文字学」を樹立した。
76年に同大を定年退職後は特別任用教授として教育研究に従事。70歳で完全に退いたが、その後、13年の歳月をかけて計4000ページを超える前人未到の字書「字統」「字訓」「字通」の3部作を独力で完成させた。
漢字の形や意味の変遷を系統的にまとめた「字統」が84年、漢字の訓読みが日本で定着する経緯をたどった「字訓」は87年の刊。96年、集大成である漢和辞典「字通」が完成した。孤高の碩学(せきがく)としての科学的で地道な研究成果が一般にも知られるようになり、91年に菊池寛賞を受賞、98年に文化功労者となり2004年、文化勲章を受章した。1981年から立命館大名誉教授。
(2006年11月1日23時46分 読売新聞)
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