育児語彙の開く世界 生活語彙の開く世界4
著者 友定賢治
定価2,940円
ワンワン、ブーブーといったことばは、「赤ちゃんことば」として、正当な評価も与えられず、研究対象としても取り上げられることは少なかった。わずかに柳田国男、村田孝次、早川勝広氏らの考察がみられるだけである。しかし、これらのことばが有する、①オノマトペが多い、②反復形が多い、③汎用がさかんであるという三つの特徴は、幼児を無理なくことばの世界へ導くための工夫そのものである。さらに、例えば「太陽」を、神仏と同じことば「マンマンチャン」等で教えることは、地域社会の文化・ものの見方を教えるものであって、まさに「育児のことば」であり、「育児語」という呼び名こそふさわしいと考える。本書は、全国四〇〇地点以上の調査資料に基づき、育児語の特質、語源、伝承の実態などを初めて明らかにした画期的な成果である。言語学・方言学のみならず、心理学や保育関係者にも必読のものである。
〔内容目次〕Ⅰ 「育児語」とその研究 1「育児語」という概念の有効性 2長崎県壱岐島の育児語―一地域社会の育児語― 3育児語の研究史/Ⅱ 育児語という語集合の特徴―動作語について― 1育児語動詞の語数・出自・語形 2育児語動詞と幼児語動詞との比較 3育児語動詞の分類 4まとめ/Ⅲ 育児語の語形 1育児語の語形の特徴 2育児語の音節数・音声 3反復形について―反復の意味を考える― 4育児語のオノマトペについて―壱岐島方言を中心として― 5接辞のついた育児語 6育児語「シャッポ」について 7育児語のイメージ喚起の方法/Ⅳ 汎用 1汎用の実態 2汎用の意図/Ⅴ 育児語の出自 1「衣服」を意味する育児語―「ベベ」を中心に― 2魚の育児語 3恐ろしいもの―「ガゴー」の類について―/Ⅵ 育児語の伝承 1女子学生調査 2育児者の育児語習得と使用 3育児語の伝承―なぜ、いま育児語の伝承なのか―/Ⅶ ベビートークの特徴 1ベビートークの全般的特徴 2ベビートークのくりかえし発話/Ⅷ まとめ―育児語彙の開く世界―/語句索引/引用・参考文献一覧/おわりに