研究目的
本研究では、「固有と外来」の視点から、個別言語の特徴や言語集団(チュルク諸語)の特徴を明らかにすることを目指す。さらに、言語一般に見られる「固有要素と外来要素の違い」に関する普遍性を探ろうとする試みでもある。
以下の 4 点を順次明らかにして行くことを目的とする。
個別言語に見られる固有要素と外来要素の違いを体系的に記述する。
借用現象データベースを作成する。
チュルク諸語という言語集団全体を対象として、そこに見られる借用現象の特徴を明らかにする。借用現象や言語接触に関して、他の言語や言語集団との比較対照を行なう。
借用現象一般に見られる普遍性について研究を行なう。
研究計画
個別言語に見られる借用現象の体系的記述各個別言語について、次の事項を記述する:
借用語に見られる音韻論と固有語に見られる音韻論の異同
借用語の形態論(単語のつくり)と固有語の形態論の異同
例えば、チュルク諸語における借用語のドナー言語は、アラビア語、ペルシャ語、漢語、ロシア語、英語、仏語等と多岐に亘るが、いずれも母音調和(同じ単語の中に a と e は現われないといった、母音の共起に関する制限)を持たない言語である。これら諸言語の単語が、母音調和を持つチュルク諸語に借用された時、どういった母音調和が見られるかは、チュルク諸語の間でも言語による違いが大きく、興味深い問題である。
借用現象データベースの作成借用語について、ドナー言語は何か、直接の借用か、中間ドナーが存在するか、ドナー(中間ドナー)言語での意味との異同、借用の時期、借用に際しての音変化等を記述する。また、単語の借用(借用語)だけではなく、文法的借用(ある文法機能をもつ形態素を借用すること。語順なども関わる)や翻訳借用(calque)等も記述する。
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