複合辞研究の現在 藤田保幸・山崎誠 編 和泉書院
編者 藤田保幸・山崎誠
出版社 和泉書院
定価 11,550円(税込み)
「複合辞」(複合助詞・複合助動詞)の発達は、近・現代日本語の文法の重要な特徴であり、その意味・用法の的確な理解は日本語の運用の一つの基礎となるものであるが、こうした形式に関する研究はまだまだ十分に掘り下げられているとは言い難い。本書は、そのような問題意識のもとに、平成14~16年度に科学研究費の交付を受けて行われた複合辞に関する共同研究の成果を、論文集の形で世に問うもので、複合辞研究に関する初めての包括的な研究書としての体裁を備えたものとなっている。収録された研究論文では、いずれも複合辞及び関連の形式を取り上げて多角的な考察が展開されており、それぞれが「複合辞研究」についての「現在」の研究水準を示すものだといえる。詳細な「複合辞関係文献目録」も付され、今後の複合辞研究の基礎文献となる一書である。
〔内容目次〕
はじめに/第1部・序論 複合辞研究の展開と問題点 藤田保幸 /第2部・研究論文 「言う」を用いた複合辞―文法化の重層性に着目して― 砂川有里子/複合辞「うえで」について―特に動詞の基本形に接続する「うえで」の特徴― 馬場俊臣/複合辞「~くせに」について 藤田保幸/原因・理由の暗示的累加を表す従属節―こともあって・ことだし― 前田直子/新聞記事データに見る「につれて」「にしたがって」 山崎誠 /格助詞らしからぬ〈複合格助詞〉―ニツイテ、ニトッテ、ヲモッテ、トシテの場合― 三井正孝/複合格助詞「にとって」の意味と文法機能 杉本武 /「~どころか」、「どころで(は)ない」とその周辺の諸表現―あわせて、「~ばかりか、~はおろか」等との比較― 服部 匡/複合辞研究と文法化―動詞が欠落した口語的複合辞を例として― 松木正恵/「ての」の用法について 丹羽哲也/集合を設定する「ウチ」の分布特性 江口 正/コピュラ再考 田野村忠温/複合辞「として」について―中国語との対照― 中畠孝幸・楊佳/日本語と朝鮮語における複合格助詞再考―対照言語学からのアプローチ― 塚本秀樹/第3部・資料編 複合辞関係文献目録 山崎誠・藤田保幸/英文目次(Contents)/執筆者一覧