時間の中の文と発話 串田秀也・定延利之・伝康晴 編 ひつじ書房
編者 串田秀也・定延利之・伝康晴
出版社 ひつじ書房
定価 3,360円(税込み)
文や発話が表現された後のものとしてではなく、表現される過程そのものに焦点をあてる。従来難しいとされてきた実際の文の研究に本格的に取り組む文研究の最先端。
従来の文研究においては、文が時間の流れの中で産出されるという視点が弱い(文頭発話時と文末発話時の時間差がないかのように分析される)。実際には、書き言葉であれモノローグであれ会話であれ、文は時間の経過の中で産出される。文頭発話時の「意図」や「計画」が文末発話時までに不変であるという保証はないし、会話においてはそのあいだに聞き手からのさまざまな反応が介在しうる。文や発話が、時間の流れの中で産出されることによって一音一音、一語一語開示されていく「進行性」を持つことを直視した場合、従来の文研究にはどのような限界があるか、従来の文研究で捉えきれないどんな現象が視野に入るか、これらのことを考えた論文を収録する。
執筆者
野田尚史 時間の経過から生まれる破格文
丸山岳彦 デスネ考
高梨克也・丸山岳彦 自発的な話し言葉に見られる挿入構造と線状化問題
伝康晴 発話冒頭付近での語句の繰り返しの機能
岩崎勝一・大野剛 「即時文」・「否即時文」-言語学の方法論と既成概念
高梨克也 進行中の文に対する聞き手の漸進的文予測のメカニズムの解明
榎本美香 発話末要素の認知と相互作用上の位置づけ
坊農真弓・片桐恭弘 対面会話における発話と視線のモニター機能と調整機能